【詩】骨のような女は

骨のような女は、犬を連れて歩いていた。それが何の犬か、僕には解らなかったが、紐を付け、首輪で引いていたのだから、犬には違いなかった。枝のような腕で、紐を吊っていた。奇妙なことに、女もまた、天から吊られているようだった。頭頂からピンと張った糸に引っ張られつつ、爪先立ちになって、俯きながら歩いていた。つばのある帽子を被っていて、表情は見えない。が、笑っていないことだけは確かであった。奇妙なことに、犬もまた、女から吊られているようだった。頭頂からピンと張った糸に引っ張られつつ、爪先立ちになって、俯きながら歩いていた。その顔は毛に被われて、表情は見えない。が、笑っていないことだけは確かであった。奇妙なことに、僕もまた、天から吊られているようだった。そろり、そろりと、地雷原かのように慎重に歩く女を見て、僕もまた、爪先立ちになって、俯きながら歩いていた。

夕暮れ時。女と、犬と、僕の、影。薄暗いコンクリートに、魂が滲み出ていくようだった。足元に広がるものを見つめ「これは小便じゃない」と、女は呟いた。暫くの沈黙の後、奇妙なことに、叫び出した。「これは私じゃない」。震えて吐き出す声を見ながら、僕は母を思い出した。

ある夏の暮れ。母は叫んでいた。いつものようにギィギィと喚いていた。母の仕事はそれだった。怒ることを見つけ、ギィギィと泣き叫ぶことだった。震えて吐き出す声を見ながら、僕は母を聞いていた。僕の仕事はそれだった。怒る母を見つめ、ギィギィと

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