「宣告された中では、君が一番役に立つよ。」
医者は冷たく、そう言い放つ。
僕はウィルスとして生まれ、ウィルスとして育った。
当然、特に選択の自由とかもなかったし、
行きつくところなんて決まっていた。
生きるか死ぬか、ってヤツだ。
何でも嘆けばイイってもんじゃないけど、僕にもそんな時はある。
いつまでたっても一人ぼっち、コミュニケーションなんて取れやしない。
何故なら、僕は、彼らにとって殺すべき対象だからだ。
大人たちは、目ひんむいて、襲ってくるんだぜ。
子供たちは優しいようで、アレは仮面だ。
でも、そんな嘆きも今日で終わり。
ようやく僕にも、安息と平穏が訪れる。
せっかくそう期待したのに、どうやら違うらしい。
この輩は、もう長くないと言っている。
「ざまーみろ、俺たちを殺そうとしたツケだ。」
吐き捨てるアイツを僕は知らないが、賛同はする。
生まれて以来、僕は追われ続けて来たんだ。
幸せも発展もない、この小さな殻の中で。
医者は随分、やつれていた。
それはココからでも、良く見える。
何かの液体の中で冷静に僕を見つめる目は、
落ち窪んでいて、頬はこけ、浅黒い面持ち。
だがその目の半分は、希望に溢れているようにも見えた。
現在と未来とを、行き来しているような。
「君とは長い付き合いだ。協力してもらおうか。」
先の短い医者は、そう言った。
僕は、殺戮者と友達になったのだ。