その日僕は、公園で首を吊ろうとした。
まるで可愛げの無い、雨の日だった。
傘も差さずに出かけたその足で、
何か固いものを蹴っ飛ばした。
それは僕の、心臓だった。
無残に灰色に変色した、
僕の未練と後悔そのものだった。
途端に恐ろしく寒気がして、
突然何も考えられなくなって、
僕は公園を飛び出した。
怖じ気付いたのだった。その心臓に。
10年後の僕が、10年前の僕に声をかけるなら、
いったい、何と言うだろうか。
「臆病者!」と、なじるのか、
「よく生きたね」と、無責任に頭をなでるのか。
僕は今でも、紐を片手に生きている。